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社会・福祉

まもられなかった人たち

検証「借上復興公営住宅」の強制退去策

兵庫県震災復興研究センター/編
津久井進・市川英恵・出口俊一・
吉田維一・関本龍志・井口克郎・藤原柄彦/執筆

まもられなかった人たち
  • ジャンル 社会・福祉

    判型 A5判・132ページ

    発行 2022年12月

    定価 1,430円(税込)

    ISBN978-4-86342-339-8 C0036

「出て行かなければならないと裁判所がいうなら、
この部屋を出てどうやって生きていったらいいのかも教えてほしい」
この問いに答える責任がある。

「借上復興住宅」とは、被災者の住宅需要に応えるため、民間の所有する住宅を地方公共団体等が借り上げ、個々の被災者に公営住宅として提供したもの。

阪神・淡路大震災から15年が過ぎた2010年、突然、神戸市は、借上復興住宅の入居者に立ち退きを求める方針を打ち出した。
その理由は借上復興住宅で生じる経費が財政を圧迫していること、そして、入居当初から20年間の期間を切った契約だったことをあげている。しかし、入居者は当時入居期間の説明をされておらず、書面に記載がない場合もあった。震災後、避難所や仮設住宅に移り、公的な復興住宅に入った人たちは高齢者や生活に困難を抱える人たちも多い。
ようやく近隣との人間関係を形成し、安心して生活を送っていたかつての被災者は、突然、ふたたび住まいを失うことになる。その後、借上復興住宅制度は自治体によって方針が変わり、住み続けたり住み替えたりするだけでなく、明渡しを求める裁判闘争にまで深刻化した。

住まい、いのち、健康、法制度、人権…様々な課題が浮き彫りになった「借上復興住宅問題」を、弁護士・研究者・入居者支援者らが検証する。

CONTENTS

序文 借上復興住宅が問いかけたもの
1  住むこと 生きること 追い出すこと
2  被災者の健康・安心・幸福を脅かす「借上公営住宅」の強制退去策
3  借上復興住宅問題 裁判官の見たもの 見えなかったもの
4 なぜ居住問題で「健康権」が問われたのか
「健康権」保障の視点から見た借上復興公営住宅追い出し訴訟をめぐる行政・司法の問題点
資料1  鑑定意見書
2  意見書
3  借上公営住宅における入居期限に関する意見書
COLUMN
請求異議訴訟とは何か
ホッとコラム(放っとコラム)♪い・しょく、じゅう♪について
入居者支援の取り組み

PROFILE

兵庫県震災復興研究センター

https://shinsaiken.hatenablog.com/

阪神・淡路大震災(1995年1月17日)の直後の大混乱の中で、いち早く被災者の暮らしの復旧、被災地の復興を目標として、日本科学者会議兵庫支部と兵庫県労働運動総合研究所が共同で個人補償の実施を中心内容とした「震災復興のための提言」を1月29日に国と被災自治体に提出。この2つの研究機関を母体に1995年4月22日、兵庫県震災復興研究センター(震災研究センター)を設立。

それから27年、震災研究センターは、被災地と被災者の状況を直視し「みんなできりひらこう震災復興」を合言葉に、調査・研究、政策提言(60数本)を重ねるとともに、全国各地の関心のある人々への継続的な情報発信(機関誌『震災研究センター』発行)を続けている。